情報公開法第五条第一号

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開示決定等に関する審査基準

(平成十三年四月)

情報公開法第五条第一号(個人に関する情報)

個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報
人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報
当該個人が公務員(国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条第一項に規定する国家公務員及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号第二条に規定する地方公務員をいう。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分

1. 第一号の中の個々の概念の意義
(1) 「個人に関する情報」(以下「個人情報」という。)とは、個人の内心、身体、身分、地位その他個人に関する一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての情報が含まれるものであり、個人に関連する情報全般を意味する。したがって、個人の属性、人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。なお、ここでいう「個人」には、居住する場所や国籍の如何によらず、生存する個人のほか、死亡した個人も含まれる。
(2) 「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」とは、氏名等のように、情報そのものが当該情報に係る個人を識別させ得るものに加え、住所、電話番号、役職名、個人別に付された記号、番号(振込口座番号、試験の受験番号、保険証の記号番号等)等1の「その他の記述等」によって、特定の個人を識別することとなる個人情報の全体である。なお、「その他の記述等」は、単独では必ずしも特定の個人を識別することができない場合もあるが、当該情報に含まれるいくつかの記述等が組み合わされる2ことにより、特定の個人を識別することができることとなる場合が多いと考えられる。
(3) 「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるもの」とは、当該情報単独では特定の個人を識別することができないが、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができるものである。照合の対象となる「他の情報」の範囲については、当該個人情報の性質や内容等に応じて、個別に適切に判断することが必要となる。公知の情報や、図書館等の公共施設で一般に入手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報に加え、何人も開示請求できることから、仮に当該個人の近親者、地域住民等であれば保有している又は入手可能であると通常考えられる情報も照合すべき「他の情報」に含まれる3。他方、特別の調査4をすれば入手し得るかも知れないような情報については、一般的には、「他の情報」に含めて考える必要はないものと考えられる。なお、例えば、極めて小規模の集団に属する個人に関する情報のように、個人識別が可能な部分を除いた上で開示した場合等においても、当該個人を比較的容易に特定することができる場合があり得るため、個人の権利利益の十全な保護を図る観点からは、「個人識別性」を判断する際には、情報自体の性質、周辺的な状況(例示の場合には、集団の性格、規模)等を考慮し、個人識別性を判断すべきである。
(4) 「特定の個人を識別することができないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とは、匿名の作文、無記名の個人による著作物5、当該個人のみが知り得る情報のように、個人の人格と密接に関連したり、公にすれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものであり、特定の個人を識別できない個人情報であっても、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるものをいう。例えば、厳密には特定の個々人を識別することができる情報ではないが、特定の集団に属する者に関する情報を開示すると、当該集団に属する個々人に不利益を及ぼすおそれがある場合等が考え得る。
(5) 「法令の規定6により又は慣行として公にされ7、又は公にすることが予定されている情報」8とは、何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている法令の規定により、又は事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されているものをいう9。なお、「公にされ」とは、当該情報が現に公衆が知り得る状態10に置かれることをいい、現に公知(周知)の事実である必要はない。逆に、過去に公にされたものであっても、時の経過により、開示請求の時点では公にされているとは見られない場合があり得る。また、「公にすることが予定されている」とは、将来的に公にする予定(具体的に公表が予定されている場合に限らず、求めがあれば何人にも提供することを予定しているものも含む。)の下に保有されている状態をいう。ある情報と同種の情報が公にされている場合に、当該情報のみ公にしないとする合理的な理由がないなど、当該情報の性質上通例公にされるものも含む。ただし、当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらない。
(6) 「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」とは、公にすることにより害されるおそれがある個人の権利利益よりも、人の生命、健康等の保護の必要性が上回るとして、開示する必要性と正当性が認められる個人情報をいう。現実には、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合11も含まれる。
(7) 「当該個人が公務員である場合において」とは、個人情報のうち、当該個人が「公務員12」である場合を指す。ここでいう「公務員」とは、広く公務遂行を担任する者を含むものであり、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国及び地方公共団体の職員のほか、国務大臣、国会議員、裁判官等を含む。また、公務員であった者が当然に含まれるものではないが、公務員であった当時の情報についても、ここでいう「当該個人が公務員である場合」に該当する。
(8) 「職務の遂行に係る情報」とは、公務員が行政機関その他の国の機関又は地方公共団体の機関の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に関する情報がこれに含まれる13。なお、「職務の遂行に係る情報」は、具体的な職務の遂行との直接の関連を有する情報であり、例えば、公務員の情報であっても、職員の人事管理上保有する健康情報、休暇情報等は含まれない14。

2. 第一号に定める不開示情報への該当性の審査に当たっての基本的考え方
(1) 行政文書の開示/不開示の決定に当たっては、国民等からの請求に可能な限り応えることを原則としつつも、個人の権利利益の十分な保護を図るため、特定の個人を識別できる情報は、原則として不開示とするほか、特定の個人を識別することができないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがある情報についても、個人の権利利益の十全な保護を図る観点から、不開示とする。
(2) 地方公共団体の情報公開条例や諸外国の情報公開法制の中には、個人に関する情報のうち、個人のプライバシー等の権利利益を害するおそれがあるものに限って不開示情報とする方式(プライバシー保護型)を採用しているものもあるが、いわゆるプライバシーの概念は、我が国では法的にも社会通念上も必ずしも確立したものではないことから、情報公開法では、個人識別型を採用している。ただし、個人識別型を採用した結果、本来保護する必要性のない情報も含まれることになることから、公知の情報等個人に関する情報の不開示情報から除かれるべきものを第一号において限定列挙している。なお、「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、個人情報の意味する範囲に含まれるが、当該事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により不開示情報該当性を判断することが適当であることから、第一号でいう個人情報からは除外している。
(3) 情報公開法は、何人に対しても、目的の如何を問わず開示請求を認めていることから、本人に関する情報の開示請求があった場合にも、開示請求者が本人であることは考慮されない。したがって、特定の個人が識別される情報であれば、本号のイからハ又は公益上の理由による裁量的開示(第七条)に該当しない限り、不開示となる。
(4) 「個人」には、生存する個人のほか死亡した個人も含まれるので、生前に不開示であった情報が、個人が死亡したことをもって開示されることにはならない。
(5) 「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」に係る情報の開示/不開示の決定に当たっては、個人の権利利益にも様々なものがあり、また、保護すべき人の生命、健康、生活又は財産についても、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討が必要である15。
(6) 公務員の職務活動の過程又は結果が記録されている情報の開示/不開示の決定に当たっては、政府の諸活動を説明する責務が全うされるようにするという視点、及び公務員の個人としての権利利益を十分に保護する視点の調和を図る観点から、どのような地位、立場にある者(「職」)がどのように職務を遂行しているか(「職務遂行の内容」)については、たとえ、特定の公務員が識別される結果となるとしても、個人に関する情報としては不開示とせず、氏名については、公にした場合、公務員の私生活等に影響を及ぼすおそれがあり得ることから、私人の場合と同様に個人情報として保護に値すると位置付ける。ただし、当該公務員の職と氏名が、法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている場合には、氏名についても個人情報としては不開示とはならないことになる。慣行として公にされているかどうかの判断に当たっては、人事異動の官報への掲載その他行政機関により職名と氏名とを公表する慣行がある場合、行政機関により作成され、又は行政機関が公にする意思をもって(あるいは公にされることを前提に)提供した情報を基に作成され16、現に一般に販売17されている職員録に職と氏名とが掲載されている場合には、その職にある者の氏名を一般に明らかにしようとする趣旨であると考えられ、慣行として公にされ、又は公にすることが予定されていると解される。なお、「公務員」の職務遂行に係る情報が職務遂行の相手方等公務員以外の個人情報を含む場合には、当該公務員にとっての不開示情報該当性と他の個人ごとの不開示情報該当性とが別個に検討され、そのいずれかに該当すれば、当該部分に限り不開示とされることになる。

3. 第一号に定める不開示情報に該当する可能性が高い情報の例又は類型例
 第一号に係る情報の開示/不開示の決定に当たっては、個人が識別可能か否かという側面から決定可能な場合が一般的であるが、情報自体の性格と開示決定時点での当該個人を含む周辺の状況等により、決定内容が変わり得ることも排除されないことに留意する必要がある。以下に第一号に定める不開示情報に該当する可能性が高いとして、不開示とすべき情報の類型と例(不開示情報に該当するが例外的に開示すべき情報の類型と例を含む。)を掲げる。
 なお、個別の情報の具体的な内容等によって、他の不開示事由にも重複的に該当するものが存在することに留意しなければならない。
(1) 特定の個人を識別することのできる情報18
・氏名19、肖像、声、筆跡、署名、印影等特定の個人を表象する記述等
・特定の個人に付与される役職名、銀行口座番号、受験番号、保険証番号、旅券番号等の識別のための記述
(2) 他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる情報
・住所、本籍、メール・アドレス、電話番号、学歴、職歴、勤務先、勤務先での所属先等の記述
(3) 特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの
・作文等個人の人格と密接に関連する情報
・思想、宗教等個人の内心に関する情報
・健康状態、病歴、カルテ等個人の心身状態に関する情報
・家族構成、家計収支等個人の生活状態に関する情報
・結婚歴、転居歴等個人の経歴に関する情報
・個人の著作物等財産権その他個人の正当な利益を害するおそれのある情報
(4) 上記(1)~(3)の情報に該当するが、不開示としない情報
(イ)法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報
・国家公務員倫理法に基づく贈与等報告書の閲覧可能部分
・「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」に基づく個人情報ファイル簿
・行政機関より提供された情報によって刊行された職員録に記載されている職及び氏名
(ロ)人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報
(ハ)公務員の職務の遂行に係る情報であって、当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分(他に不開示情報事由があるものを除く。)
・決裁文書(公電案、公信案を含む。)の中の公務員に係る個人情報であって、当該公務員の職及び職務遂行の内容に係る部分
・各種資料(各種報告書20や、当省より外部に提供した資料)の中の公務員に係る個人情報であって、当該公務員の職及び職務遂行の内容に係る部分
・その他の公文書(旅行命令簿、契約書等)の中の公務員に係る個人情報であって、当該公務員の職及び職務遂行の内容に係る部分
1 「等」の中には、映像による情報等も含まれる。
2 年齢、性別、印影、履歴、肖像、振込金融機関名等も、組み合わせれば特定の個人を識別できる場合はあり得ると考えられる。
3 行政機関に特別の調査を義務づけるものではない。
4 行政文書の開示の実施を受けた者が、個人を特定するために、一般には入手困難な情報を特別に得るために調査活動を行うことが考えられる場合には、情報の性質、内容等に応じて個別に適切に開示/不開示を判断する。
5 個人の研究成果の発言及び講演等を録音したテープその他のものも著作物に該当する。
6 「法令の規定」には訓令その他の命令は含まれない。
7 取材等で偶発的に明らかになった情報は、一般的には「慣行として公にされ」ている情報とは考えられない。
8 個人名が公になっているとしても、該当する行政文書に当該情報が記載されていることが公になっているか否かを精査する必要もある。
9 法令の規定により、期間を限定して公にされている行政文書については、少なくとも当該期間は公にされている情報に該当する。
10 「現に公衆が知り得る状態」に置いた主体が誰であるかは、当該情報が公にされたものであるかどうかの判断とは直接的な関係がない。
11 事実認定に当たっては、特に調査等は不要で通常知り得る範囲内で判断すればよい。
12 外国政府又は国際機関の職員等は、本法にいう「公務員」には該当しない。
13 研修受講職員にとって、公務であってもその担任する職務と直接関係のない活動に関する情報、例えば、研修における出席簿や個人成績表、報告書、試験結果等は含まれない。
14 同様に、管理される職員の個人情報として保護される必要のある情報としては、職員個人に係る「人事査定・評価に係る情報、給与等の情報」が含まれる。なお、「人事査定・評価に係る情報」は第六号でも保護される。
15 本来、不開示とすべき個人情報を人の生命等を保護するために開示した場合には、国家賠償法の法定の要件を満たし、損害賠償責任が生ずるケースもあり得る(法人の場合も同じ)が、情報公開法に従い、適正な処理をした場合には、通常は想定しがたい。
16 行政機関より職員録の原稿を提供していることが前提である。
17 職員間やOBに限定して販売しているものについては、公にしている(市販している)ものには当たらない。
18 例えば、申請書、在留届等の領事関係文書等に記載された氏名、本籍等の情報が該当する。
19 外国政府関係者の氏名及び役職については、既に報道等によって公になっていると考えられる場合には原則として不開示としないが、開示に当たっては第三号等他の不開示情報該当性を慎重に判断する必要がある。
20 報告書であっても、職員調書等人事査定・評価に関わる報告書は第6号に定める不開示情報として、不開示とすることが考えられる。

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