情報公開法第五条第二号

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開示決定等に関する審査基準

(平成十三年四月)

情報公開法第五条第二号(法人等に関する情報)

法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。
公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの

 

1. 第二号の中の個々の概念の意義
(1) 「法人その他の団体21(国及び地方公共団体を除く。)に関する情報」とは、「法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。)」(以下「法人等」という。)の組織や事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する情報等これら団体と何らかの関連性を有する情報を指す22。なお、法人等の構成員に関する情報は、これら団体に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもある。また、ここでいう法人等には、国内外を問わず、株式会社等の商法上の会社、財団法人、社団法人、学校法人、宗教法人等の民間の法人のほか、独立行政法人、特殊法人及び認可法人、政治団体や法人ではないが権利能力なき社団等の諸団体も含まれるが、国及び地方公共団体については、その公的性格にかんがみ、除外される。
(2) 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、第一号にいう個人情報としてではなく、法人等に関する情報と同等に取り扱うこととする。
(3) 「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」とは、公にすることにより害されるおそれがある法人等の正当な権利利益よりも、人の生命、健康等の保護の必要性が上回るとして、開示する必要性と正当性が認められる情報をいう。現実には、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害等との明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり得る23。
(4) 「権利、競争上の地位その他正当な利益」とは、信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権24等の法的保護に値する一切の権利、公正な競争関係における有利な地位25及びノウハウ、信用等の運営上の地位を含む正当な利益をいう。
(5) 「行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供された情報」26とは、行政機関からの要請に応えて、情報公開法に基づく開示請求に応じて開示しないことを含め、提供された情報を第三者に提供しないとの条件の下に法人等又は事業を営む個人が任意に提供した情報をいう。ここでいう「要請」には、法令に基づく報告又は提出の命令は含まれないが、行政機関の長が報告徴収権限を有する場合でも、当該権限を行使することなく、任意に提出を求めた場合は含まれる。なお、公にしないとの条件が設けられる場合としては、行政機関の側から条件を提示して情報の提供を要請する場合のみならず、法人等又は事業を営む個人の側から情報の提供に際し条件を提示する場合、条件が黙示的に付されている場合27も想定されるが、いずれにしても条件に関し双方の合意が成立していることが必要である。
(6) 「法人等又は個人における通例として公にしないこととされている情報その他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められる情報」とは、当該法人等又は個人が公にしていない等の個別具体的な事情ではなく、当該法人等又は個人が属する業界28における通常の取扱いにおいて公にしないこととなっている情報、又は公にしないとの条件を付することが、当該情報の性質、当該情報の提供当時の諸般の事情、及び必要に応じ提供後の変化を考慮して合理的と判断される情報をいう。例えば、公にしないとの条件が付されていても、提供後何等かの事情で現に当該情報が公にされている場合には該当しない。

2. 第二号に定める不開示情報への該当性の審査に当たっての基本的考え方
(1) 第二号に係る情報の開示/不開示の決定29に当たっては、国民等からの請求に可能な限り応えることを原則としつつも、法人等の又は事業を営む個人の当該事業に係る正当な利益を保護するために、これら利益を害するおそれのある情報は不開示とする30。また、法人等又は事業を営む個人から公にしないとの条件の下に任意に提供された情報についても、情報提供者の信頼と期待を基本的に保護するため31に、当該条件が合理的なものと認められる限り、不開示とする。
(2) 「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人には様々な種類、性格のものがあり、その正当な権利利益にも様々のものがあるので、法人等又は事業を営む個人の性格や権利利益の内容、性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の憲法上の権利(信教の自由、学問の自由等)の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と行政との関係等を十分考慮して適切に判断する必要がある32,33。

3. 第二号に定める不開示情報に該当する可能性の高い情報の例又は類型例
 以下に第二号に定める不開示情報に該当する可能性が高いとして、不開示とすべき情報の類型と例を掲げる。
 なお、個別の情報の具体的な内容等によって、他の不開示情報にも重複的に該当するものが存在することに留意しなければならない。
(1) 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報
・法人等の生産、技術等に関する情報であって、公にすることによって、当該法人の持つノウハウ等の正当な利益を害するおそれのあるもの
・法人等の研究開発に関する情報であって、公にすることによって、当該法人の持つノウハウ等の正当な利益を害するおそれのあるもの
・法人等の営業、販売に関する情報であって、通常一般には入手できない個別の取引内容に関するもの
・法人等の運営等に関する情報であって、一般に公にされない設備投資、用地取得等に係る運営戦略、資金調達等の財務情報、雇用方針、経営方針などが明らかにされ、又は具体的に推測されるおそれのあるもの34
(2) 行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの
・在外公館に提供された邦人企業等の緊急時連絡先リスト、緊急時対応マニュアル、任国政府等への要望等
22 法人等の内部管理に属する経営方針、経理、人事等に関する情報、生産、技術、営業、販売、運営その他の事業活動に関する情報に加え、名誉、社会的信用、社会的活動の自由など法人の権利利益に関する情報等も法人等と何らかの関連性を有する情報を指す。
23 例えば、毒性のある物質の発生により人の生命・健康が損なわれているような急迫した事態が生じた場合に、当該物質の発生と具体的な発生源について明確な因果関係が証明されていなくとも、何らかの因果関係があると推測されるときが想定される。
24 著作権法により、著作者人格権以外は財産的権利に該当する。
25 製造、販売等において他社に優る地位などが該当する。
26 法人等からの情報の「提供」は、書面に限らず、口頭その他の方法による場合もある。
27 「黙示的に条件が付されている場合」には、提供された情報の性質、提供当時の慣行、状況等に照らし、公にしないとの条件が付されたものと合理的に認められる場合などが該当する。
28 「業界」に準じて考えられるものも含む。
29 「個人」の場合と同様、当該法人等から開示請求が行われても、決定内容に相違はない。
30 法人の名称、所在地、役員等は登記により公開されていることから、本号イ及びロに該当する場合を除き、原則として開示する。登記の行われていない法人等についても、本号イ及びロに該当する場合を除き開示することとなるが、本号イ及びロ該当性の判断に当たっては、登記が行われていない事情を考慮する必要がある。
31 法人等に属する個人及び事業を営む個人から提供された情報及び情報源は、本号によって保護されるが、個人としての資格で提供された情報及び情報源は、第一号によって保護される。なお、行政機関の情報収集能力は別途第六号によっても保護されるが、国際的な情報収集に係る情報及び情報源は、第三号によって保護されるのが適当である。
32 公にされる情報自体からは法人等の権利等が害されるおそれはないが、「他の情報と照合することにより」その可能性が生じる場合には、「害するおそれ」があるものと判断する。
33 「政党が作成した文書であって意思決定過程のもの」を行政機関が「行政文書」として保存している場合には、主として本号の不開示情報該当性を審査することとなるが、一般論として、政党の意思決定過程の情報については、政治活動の自由の観点から適切な保護を図る必要がある。
34 当該法人の諸外国における企業活動も該当し得る。

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