情報公開法第五条第三号

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開示決定等に関する審査基準

(平成十三年四月)

情報公開法第五条第三号(国の安全等に関する情報)

公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報

1. 第三号の中の個々の概念の意義
(1) 「国の安全」とは、国家の構成要素である国土、国民及び統治体制が害されることなく平和で平穏な状態に保たれていること、すなわち、国としての基本的な秩序が平穏に維持されている状態をいう。具体的には、直接侵略及び間接侵略に対し、独立と平和が守られていること、国民の生命が国外からの脅威等から保護されていること、国の存立基盤としての基本的な政治方式及び経済・社会秩序の安定が保たれていることなどが考えられる。「国の安全が害されるおそれ」とは、これらの国の重大な利益に対する侵害のおそれ(当該重大な利益を維持するための手段が有効に機能しなくなるおそれがあると考える場合を含む。)をいう。
(2) 「他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ」のある場合とは、「他国若しくは国際機関」(我が国が承認していない地域、政府機関の他これに準ずるもの(各国の中央銀行等)、外国の地方政府又は国際会議その他国際協調の枠組みに係る組織(アジア太平洋経済協力、国際刑事警察機構等)の事務局等を含む。以下「他国等」という。)との間で、相互の信頼に基づき保たれている正常な関係に支障を及ぼすようなおそれをいう。例えば、公にすることにより、他国等との取決め又は国際慣行に反することとなる、他国等の意思に一方的に反することとなる、他国等に不当に不利益を与えることとなるなど、我が国との関係に悪影響を及ぼすおそれがある情報が該当すると考えられる。
(3) 「他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ」があるものとは、他国等との現在進行中の又は将来予想される交渉35において、我が国が望むような交渉成果を得られなくなる、我が国の交渉上の地位が低下するなどのおそれをいう。例えば、交渉(過去のものを含む。)に関する情報であって、公にすることにより、現在進行中の又は将来予想される交渉に関して我が国が執ろうとしている立場が明らかにされ、又は具体的に推測されることになり、交渉上の不利益を被るおそれがある情報が該当すると考えられる。
(4) 「公にすることにより、…おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」とは、公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国等との信頼関係が損なわれるおそれ又は国際交渉上不利益を被るおそれがある情報については、一般の行政運営に関する情報とは異なり、その性質上、開示・不開示の判断に高度の政策的判断を伴うこと、我が国の安全保障上又は対外関係上の将来予測としての専門的・技術的判断を要することなどの特殊性が認められる。この種の情報については、司法審査の場においては、裁判所は、本号に規定する情報に該当するかどうかについての行政機関の長の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるか(「相当の理由」があるか)どうかを審理・判断することが適当と考えられることから、このような規定としたところである。本号の該当性の判断においては、行政機関の長は、「おそれ」を認定する前提となる事実を認定し、これを不開示情報の要件に当てはめ、これに該当すると認定(評価)することとなるが、このような認定を行うに当たっては、高度の政策的判断や将来予測としての専門的、技術的判断を伴う。裁判所では、行政機関の長から第一次的判断(認定)を尊重し、これが合理的な許容限度内であるか否かという観点から審理・判断されることになる。

2. 第三号に定める不開示情報への該当性の審査に当たっての基本的考え方
(1) 我が国の安全、他国等との信頼関係及び我が国の対外的な交渉上の利益を確保することは、国民全体の基本的な利益を擁護するため政府に課された重要な責務である。これらの分野における情報の公開は、他の行政分野における情報の公開と異なり、我が国の安全や利益と直接かつ密接に関わるものも多い。したがって、行政文書の開示/不開示の決定に当たっては、国民等からの請求に可能な限り応えつつも、国の責務として第三号に該当する不開示情報が不用意に公とならないように特別の配慮を払う必要がある。

3. 第三号に定める不開示情報に該当する可能性の高い情報の例又は類型例
 第三号に係る情報の開示/不開示に係る決定は、特定時点の状況に応じ変わり得るものであり、外形的な類型などを指定する等により、不開示とすべき情報を予め網羅的に列挙しておくことは適当でない。第三号に掲げる不開示情報に該当する可能性が高いことから開示/不開示の決定に当たっては慎重に審査する必要があると考えられる情報の類型を以下に掲げる36。
 なお、個別の情報の具体的な内容等によって、他の不開示情報にも重複的に該当するものが存在することに留意しなければならない。
(1) 公にすることにより、国の安全が害されるおそれのある情報
(イ) 我が国の防衛上の能力を減じる等の影響があるおそれのある情報
(ロ) 日米安保条約の下での米国との関係をはじめとする我が国と他国との関係に関連する安全保障上の利益を損なうおそれのある情報
(ハ) 平和と安全の維持のための国際的な協力の実効性を損なうおそれのある情報
(ニ) 経済の持続的発展に不可欠な資源の安定的な供給が国外からの脅威等により阻害される等により我が国の存立基盤としての基本的な経済秩序の維持を損なうおそれのある情報
(ホ) その他国の安全が害されるおそれのある情報(我が国の安全保障に否定的な影響を及ぼすおそれのある情報を含む。)
(2) 公にすることにより、他国等との信頼関係が損なわれるおそれのある情報
(イ) 他国等より、公式の立場に合致しているか否かを問わず、公開を前提とせず提供された情報
(ロ) 他国等との間において、不公表が申し合わされている情報(申合せが明示的であるかを問わない37。)
(ハ) 当該情報に関係する他国等に対し、その国際的な地位を低下させる、その安全が害される、政治・経済・社会上の混乱を惹起する等の不利益を不当に与えるおそれのある情報38
(ニ) 直接特定の不利益を与えなくとも公開することが他国等の意思や国際慣行に反し、我が国に対して有している信頼を傷つけることとなるおそれのある情報
(ホ) 他国等に対する我が国の見解に関する情報であって、公にすることにより、当該他国等と我が国の信頼関係を損なうおそれのあるもの
(ヘ) 国際機関を通じて行われる国際的な協力の実効性を損なうおそれのある情報
(ト) その他他国等との信頼関係が損なわれるおそれのある情報
(3) 公にすることにより、他国等との交渉上不利益を被るおそれがある情報
(イ) 現在進行中の又は将来予想される交渉に関する我が国の立場を示す対処方針等の情報
(ロ) 過去又は現在の交渉(関連を有する交渉及び内容、形式等において類似の交渉を含む。以下同じ。)に関する政府部内の検討に係る情報
(ハ) 過去又は現在の交渉に関する他国等との協議に係る情報
(ニ) 過去又は現在の交渉に関して執られた措置や対処方針
(ホ) その他他国等との交渉上不利益を被るおそれのある情報39
(4) 公にすることにより、上記(1)~(3)に該当する情報が第三者に明らかとなる事態を招来するおそれがある情報
(イ) 外交政策の企画、立案及び実施に付随する情報の収集、伝達、分析等の具体的活動、能力(システム、施設、設備及びそれらの運用、管理等)、手段、情報源等に関する情報
(ロ) 秘密保全のための具体的活動(警備を含む。)、能力(システム、施設、設備及びそれらの運用、管理等)、手段、計画等に関する情報
35 国際的な選挙に係る支持要請に関する交渉等も含まれる。
36 他国等に対する我が国の見解を示した情報については、類型(1)~(3)の全ての場合に該当しうる。
37 明示的に不公表を前提としていなくとも、当該情報の提供を受けた状況から提供元が当該情報を不公表とすることを期待していると認めることにつき相当の理由がある場合には黙示的に公開しないとの前提で提供された情報として不開示とすることが適当である。ただし、行政機関の長はそのような判断が合理性を有するものであることを説明する責任を有することは言うまでもない。
38 必ずしも当該他国等が保有する情報若しくはそれらを経由して入手した情報に限定されない。
39 必ずしも当該他国等を交渉当事者とする交渉に関する情報に限定されない。

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