情報公開法第五条第五号

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開示決定等に関する審査基準

(平成十三年四月)

情報公開法第五条第五号(審議、検討等情報)

国の機関及び地方公共団体の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの
1. 第五号の中の個々の概念の意義
(1) 「国の機関及び地方公共団体の内部又は相互間における審議、検討又は協議」とは、国の機関である国会、内閣、裁判所及び会計検査院(これらに属する機関を含む。)並びに地方公共団体について、具体的な意思決定の前段階としての政策等の選択肢に関する、それぞれの機関の内部又は他の機関との相互間における自由討議のようなものから、一定の責任者の段階での意思統一を図るための協議や打合せ、決裁を前提とした説明や検討、審議会等又は行政機関が開催する有識者、関係法人等を交えた研究会42等における審議や検討など、様々な審議、検討及び協議43をいう。
(2) 「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を公にすることの公益性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、公にすることによる利益と不開示にすることによる利益とを比較衡量した上で各行政機関の長が判断する。
(3) 「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」のある場合とは、公にすることにより、外部からの圧力や干渉等の影響を受けることなどにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合をいう。例えば、審議、検討等の場における発言内容が公になると、発言者やその家族に対して危害が及ぶおそれがある場合44には、第四号等の他の不開示情報に該当する可能性もあるが、「率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれ」が生じたり、また、行政機関内部の政策の検討が不十分な段階での情報が公になり、外部からの圧力により当該政策に不当な影響を受けるおそれがあり、「意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」が生じたりすることのないようにする趣旨である。
(4) 「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」がある場合とは、未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報などを公にすることにより、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合をいう。例えば、特定の物資が将来不足することが見込まれることから、政府として取引の規制が検討されている段階で、その検討情報を公にすれば、買い占め、売り惜しみ等の国民の間に不当な混乱が起こるおそれがある場合が該当する。
(5) 「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」がある場合とは、尚早な時期に情報や事実関係の確認が不十分な情報などを公にすることにより、投機を助長するなどして、特定の者45に不当に利益を与え又は不利益を及ぼす場合46を想定したもので、(4)と同様に、事務及び事業の公正な遂行を図るとともに、国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。例えば、施設等の建設計画の検討状況に関する情報が開示されたために、土地の買い占めが行われて土地が高騰し、開示を受けた者等が不当な利益を得たり、違法行為の事実関係についての調査中の情報が開示されたために、結果的に違法・不当な行為を行っていなかった者が不利益を被ったりするおそれのある場合が該当する。

2. 第五号に定める不開示情報への該当性の審査に当たっての基本的考え方
(1) 開示請求の対象となる行政文書は、決裁、供覧等の手続を終了したものに限られないことから、当省を含む国の機関及び地方公共団体の内部又は相互間における意思決定前の審議、検討又は協議の段階において作成又は取得された文書であっても、組織的に用いるものとして現に保有していれば、開示請求の対象となる行政文書である。このように、開示請求の対象となる行政文書の中には、行政機関等としての最終的な意思決定前の事項に関する情報が少なからず含まれることから、当該意思決定又は関連する意思決定が損なわれないようにするため、一定の情報47を不開示とする48。しかしながら、事項的に意思決定前の情報をすべて不開示とすることは、政府がその諸活動を説明する責務を全うするという観点からは、適当ではないので、個別具体的に、開示することによって行政機関の適正な意思決定に支障を及ぼすおそれの有無及び程度を考慮し、不開示とされる情報の範囲を画することとなる。
(2) 審議、検討等に関する情報については、行政機関としての意思決定が行われた後は、一般的には、当該意思決定そのものに影響が及ぶことはなくなることから、本号の不開示情報に該当する場合は少なくなるものと考えられるが、当該意思決定が政策決定の一部の構成要素であったり、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われる等審議、検討等の過程が重層的、連続的な場合には、当該意思決定後であっても、政策全体の意思決定又は次の意思決定に関して本号に該当するかどうかの検討が行われるものであることに注意が必要である49。また、当該審議、検討等に関する情報が公になると、審議、検討等が終了し意思決定が行われた後であっても、国民の間に混乱を生じさせたり、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある場合等があれば、本号に該当し得る。ただし、審議、検討等に関する情報の中に、調査データ等で特定の事実を記録した情報があった場合、例えば、当該情報が専門的な検討を経た調査データ等の客観的、科学的事実やこれに基づく分析等を記録したものであれば、一般的に本号に該当する可能性が低いものと考えられる。
(3) 審議会に関する情報の開示/不開示の判断は、当該審議会の議決等により決められるものではなく、当該審議会の性質及び審議事項の内容に照らし、個別具体的に、率直な意見交換等を不当に損なうおそれがあるどうかにより決定されることとなる。

3. 第五号に定める不開示情報に該当する可能性が高い情報の例又は類型例
 以下に第五号に定める不開示情報に該当する可能性が高いとして、不開示とすべき情報の類型と例を掲げる。
 なお、個別の情報の具体的な内容等によって、他の不開示情報にも重複的に該当するものが存在することに留意しなければならない。
(1) 公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれのある情報
・審議会等における審議や具体的な意思決定の前段階として政策等の選択肢に関する自由討議・検討50その他の行政機関内部又は行政機関相互間における審議、検討51等に関する情報であって、公にすることにより、有形・無形、直接的・間接的な外部からの圧力や干渉等の不当な影響を受けるおそれのあるもの
・国際約束に係る交渉等の準備段階における行政機関内部又は行政機関相互間の検討又は協議に係る情報
・調停、仲裁その他の紛争処理上の事案に関する情報
・叙勲、表彰等に係る推薦に関する情報
(2) 公にすることにより、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれのある情報
・関係者による事実関係の確認が得られていない情報52
・審議、検討等の初期の段階の情報であって、以後の調整によって相当程度変更されることが容易に想像できるもの
・他国等の安全情勢に関する情報53
(3) 公にすることにより、特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれのある情報
・一定期間後に一斉公表が予定されている条約、国際的な取決めに基づく措置等に関する情報
・他国等が検討している措置、処分等に関する情報であって、公になることにより、為替、物価、株価等の変動が容易に想定されるもの
42 私的研究会が意見聴取等を行う場である場合には、行政機関の一部を構成するものではなく、「国の機関及び地方公共団体の内部又は相互間」に当たらないので、本号には該当しない。
ただし、行政機関が審議、検討等を行うに際し、行政機関がこのような私的研究会を開催するものであれば、当該私的研究会は本号に該当する。
43 ある機関において最終的な意思決定を行うまでの過程で行われる審議等に関する情報は、これに関与した全ての機関にとって、審議等に関する情報に当たると解する。すなわち、ある行政機関が一定の行政行為を行うに当たり、他の行政機関と協議を行う場合には、協議を受けた行政機関としては、協議に際して述べるべき意見を決することが最終的な意思決定ではあるが、案件全体から見た場合、最終的な意思決定は協議後において協議元の行政機関が行っているため、このような協議に関する情報は全ての行政機関にとって「意思決定に至るまでの過程で行われる協議」に関する情報に該当する。
44 利害対立の激しい事項についての調整、審議等を行う場において、特定の意見を主張するものに対して、その反対派や利害関係者から、当該発言者やその家族に対し、無言電話や嫌がらせを行うようなケースが想定される。
45 具体的に個人又は法人等が確定していることまでは求められず、ある程度の蓋然性をもってその存在が認められることをもって足りる。
46 「利益」及び「不利益」は経済的なものに限らず、精神的苦痛、社会的信用等も含みうる。
47 行政機関内部等で審議、検討等を行う場合に、その審議、検討等がそもそもその事務又は事業の適正な遂行の一環として行われる場合には、第六号に規定される不開示情報に該当する場合もある。
48 最終的に意思決定に至らなかった場合も含まれる。
49 結果的に意思決定に反映されなかった情報についても、そのまま開示した場合、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあると判断される場合については不開示とし得る。
50 政策決定の前提となる国際情勢の分析等も含まれる。
51 重要な会議等の準備段階における勉強会に関する情報も含まれる。
52 例えば、事実関係が明らかではない外国に関する情報が該当する。
53 例えば、他国等の安全情勢に関する分析、評価等が該当する。なお、当該情報は(3)にも該当し得る。

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