情報公開法第五条第六号

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開示決定等に関する審査基準

(平成十三年四月)

情報公開法第五条第六号(事務又は事業に関する情報)

国の機関又は地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国又は地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
国又は地方公共団体が経営する企業に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ

1. 第六号の中の個々の概念の意義
(1) 「次に掲げるおそれその他(中略)おそれ」について、イからホまでに掲げられている「おそれ」は、各行政機関共通的に見られる事務又は事業に関する情報であって、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的な支障を挙げたものであり、これらの事務又は事業の外にも、同種のものが反復されるような性質の事務又は事業であって、ある個別の事務又は事業に関する情報を開示すると、将来の同種の事務又は事業の適切な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
(2) 「当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」のある場合とは、当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に実質的な支障を及ぼすおそれがある場合をいう。なお、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が要求される。
(3) 「監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」のある場合とは、(イ)主として監察的見地から事務又は事業の執行若しくは財産の状況の正否を調べる監査、(ロ)法令の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格、等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べる検査、(ハ)行政上の目的による一定の行為の禁止、若しくは制限について適法、適正な状態を確保する取締り、又は(ニ)人の知識、能力等又は物の性能等を試す試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれのある場合をいう。例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報や、試験問題54等のように、事前に公にすれば、適正かつ公正な評価や判断の前提となる事実の把握が困難となったり、行政客体による法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽をするなどのおそれがある場合が該当する。また、事後であっても、例えば、違法行為の詳細についてこれを公にすると法規制を免れる方法を示唆するようなものは該当し得る。
(4) 「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国又は地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」のある場合とは、(イ)相手方との意思表示の合致により法律行為を成立させる契約、(ロ)当事者が、対等の立場において相互の利害関係事項に関し一定の結論を得るために協議、調整などの折衝を行う交渉、又は(ハ)訴訟、行政不服審査法に基づく不服申立てその他の法令に基づく不服申立てである争訟に係る事務に関し、国又は地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれのある場合をいう。例えば、契約等に関する情報である入札予定価格等を公にすることにより公正な競争により形成されるべき適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれたり、交渉や争訟等の対処方針等を公にすることにより、当事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがある場合が該当する。
(5) 「調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」のある場合とは、国の機関又は地方公共団体が行う調査研究(ある事柄を調べ、真理を探究すること)に係る事務に関する情報であって、当該調査研究の成果を広く適正に国民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれ、当該調査研究に従事する職員の自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられるおそれがある場合をいう。例えば、知的所有権に関する情報、調査研究の途中段階の情報などで、一定の期日以前に公にすることにより特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがある場合、試行錯誤の段階のものについて、公にすることにより、創意工夫や研究意欲等が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがある場合が該当する。
(6) 「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」のある場合とは、国の機関又は地方公共団体が行うべき人事管理(職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分や能力等の管理に関すること)に係る事務に関する情報を公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがある場合をいう。
(7) 「国又は地方公共団体が経営する企業に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」のある場合とは、国又は地方公共団体が経営する企業(国営企業及び特定独立行政法人の労働関係に関する法律第二条第一号の国営企業及び地方公営企業法第二条の適用を受ける企業をいう。)に係る事業の正当な利益が害されるおそれのある場合をいう。企業経営という事業の性質上、第二号の法人等に関する情報と同様な考え方で、その正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがあるものを不開示とするものである。ただし、正当な利益の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する必要があり、その開示の範囲は第二号の法人等とでは当然異なり、国又は地方公共団体が経営する企業に係る事業に関する情報の不開示の範囲は、より狭いものとなる場合があり得る。

2. 第六号に定める不開示情報への該当性の審査に当たっての基本的考え方
(1) 行政機関が行う事務及び事業は、法律に基づき公益に適合するように遂行されなければばらない。したがって、開示することにより、その事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれのある情報は不開示とする。
(2) 第六号のイからホに列記された事務又は事業は、行政機関に共通に見られるものであって、開示した場合に、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれのある情報を含むことが想定されるものを例示として掲げたものであって、それらに限定されることなく、その他すべての個別の事務及び事業について、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれのある情報は不開示とする。
(3) なお、監査、試験、契約その他同種のものが、反復されるような性質の事務又は事業について、ある個別の事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、将来における同種の若しくは関連する事務又は事業の適正な遂行に支障が生じると想定されるものについても、不開示とする。

3. 第六号に定める不開示情報に該当する可能性が高い情報の例又は類型例
 以下に第六号に定める不開示情報に該当する可能性が高いとして、不開示とすべき情報の類型と例を掲げる。なお、その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の遂行に支障を及ぼすおそれのあるものについては、個別具体的に判断する必要がある55。
 なお、個別の情報の具体的な内容等によって、他の不開示情報にも重複的に該当するものが存在することに留意しなければならない。
(1) 公にすることにより、国の機関又は地方公共団体が行う監査56、検査、取締り又は試験57に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれのある情報
・監査等の対象、実施時期、監査事項その他個別具体的な監査等の実施に関する情報
・監査等のマニュアルその他の監査等の手法に関する情報
・試験の採点、合否基準その他試験の判定・評価方法に関する情報
・試験問題、解答例、試験問題の作成要領その他の具体的な試験問題作成に関する情報
(2) 公にすることにより、国の機関又は地方公共団体が行う契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国又は地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれのある情報
・訴訟、不服申立て等に係る争訟方針、打合わせ、示談等に関する情報58
(3) 公にすることにより、国の機関又は地方公共団体が行う調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれのある情報
・研究課題、研究計画、研究成果等に関する情報であって、公にすることにより、知的所有権や自由な発想、創意工夫、研究意欲等を不当に阻害するおそれのあるもの59
・調査の個別具体的な対象に関する情報であって、公にすることにより、正確な事実の把握や事後の協力が困難となるおそれのあるもの60
(4) 公にすることにより、国の機関又は地方公共団体が行う人事管理に係る事務61に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」のある情報
・人事異動、配属等の人事構想に関する情報
・勤務評定、職員調書、昇任等の選考基準その他人事査定・評価に関する情報
・給与支給額、俸給その他個々の職員の給与に関する情報
(5) 公にすることにより、国又は地方公共団体が経営する企業に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれのある情報
・国又は地方公共団体が経営する企業による事業に係る情報であって、第二号イに該当するもの
(6) 公にすることにより、その他事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
・査証審査基準及び査証発給が拒否された場合の拒否理由等の情報62

(参考)

国営企業及び特定独立行政法人の労働関係に関する法律第二条第一号
国営企業 次に掲げる事業(これに附帯する事業を含む。)を行う国の経営する企業をいう。
  イ 郵便、郵便貯金、郵便振替及び簡易生命保険の事業
  ロ 国有林野事業
  ハ 日本銀行券、紙幣、印紙、郵便切手、郵便はがき等の印刷の事業
  ニ 造幣事業
地方公営企業法第二条
1 この法律は、地方公共団体の経営する企業のうち次に掲げる事業(これらに附帯 する事業を含む。以下「地方公営企業」という。)に適用する。
 一 水道事業
 二 工業用水道事業
 三 軌道事業
 四 自動車運送事業
 五 鉄道事業
 六 電気事業
 七 ガス事業
2 以下省略。
54 試験に関する採点方法、合否基準等は試験の性格、種類等に応じて判断される。
55 個別に判断する必要があるものとして、例えば、在外公館の情報収集活動に関する情報、政府要人の行動スケジュール、想定問答、警備マニュアル等重要な会議や打ち合わせ等を円滑に進めるための事前準備に関する情報などが該当する。
56 例えば、在外公館への査察業務が該当する。
57 例えば、外務省が行う各種採用試験(面接を含む。)が該当する。
58 例えば、情報公開法に基づく、不服申立て及び情報公開訴訟、査証や旅券の発給に関する争訟、在外公館等における雇用をめぐる争訟等が該当する。
59 例えば、特定の事項についての調査研究の途中段階における報告書等が該当する。
60 例えば、他国等に関する情勢分析、他国等要人に関する分析等が該当する。
61 在外公館における現地職員、本省における臨時職員等に関する事務が含まれる。
62 行政手続法第三条第一項第十号
 外国人の出入国、難民の認定又は帰化に関する処分及び行政指導

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