(1) |
開示請求は、行政文書単位に行われるものであるため、第五条では行政文書に全く不開示情報が記録されていない場合の開示義務を定めているが、行政機関の長は、開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されている場合に、部分的に開示できるか否かの判断を行わなければならないことになる。一件の行政文書に複数の情報が記録されている場合には、各情報ごとに、第五条各号に規定する不開示情報に該当するかどうかを審査することとなり、その結果、不開示情報に該当する情報がある場合には、そのような情報は不開示となる。 |
(2) |
「個人識別情報は、通常、個人を識別させる部分(例えば、氏名)とその他の部分(例えば、当該個人の行動記録)とから成り立っており、その全体が一つの不開示情報を構成するものであり、第五条第二号から第六号に定められた「おそれ」を生じさせる範囲で不開示情報の大きさをとらえることができる他の類型の不開示情報とは、その範囲のとらえ方を異にするものである。このため、第六条第一項の規定だけでは、個人識別情報については全体として不開示となることから、氏名等の部分だけを削除して残りの部分を開示しても個人の権利利益保護の観点から支障が生じないときには、部分開示とするよう、個人識別情報についての特例規定が設けられている。 |
(3) |
第一項の規定により、部分開示の範囲を決定するに当たっては、個人識別情報のうち、特定の個人を識別することができることとなる記述等以外の部分は、個人の権利利益を害するおそれがない限り、第五条第一号に規定する不開示情報ではないものとして取り扱うことになる。したがって、他の不開示情報の規定に該当しない限り、当該部分は開示されることになる。また、第一項の規定を適用するに当たっては、容易に区分して除くことができるかどうかが要件となるので、個人を識別させる要素とそれ以外の部分とを容易に区分して除くことができない場合には、当該個人に関する情報は全体として不開示となることになる。なお、個人を識別することができる要素は、第五条第一号イ~ハのいずれかに該当しない限り、部分開示の対象とならない。 |
(4) |
部分的に削除すべき範囲は、文書であれば、一般的には、文、段落等、表であれば個々の欄等を単位として判断することをもって足りる。なお、第六号は義務的に部分開示すべき範囲を定めているものであり、実際に部分開示するに当たり、具体的な記述をどのように削除するかについては、行政機関の長の本法の目的に沿った合目的的な裁量に委ねられている。すなわち、不開示情報の記録部分の全体を完全に黒く塗るか、文字が判読できない程度に被覆するか、当該記録中の主要な部分だけ塗りつぶすかなどの方法の選択は、不開示情報を開示した結果とならない範囲内において、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して判断することとなる。その結果、観念的にはひとまとまりの不開示情報を構成する一部が開示されることになるとしても、実質的に不開示情報が開示されたと認められないのであれば、行政機関の長の不開示義務に反するものではない。 |
(5) |
個人を識別させる要素を除去することにより誰の情報であるかが分からなくなれば、残りの部分については、通常、個人情報としての保護の必要性は乏しくなるが、個人識別性のある部分を除いても、開示することが不適当であると認められるものもある。例えば、作文などの個人の人格と密接に関連する情報65や、個人の未公表の研究論文等開示すると個人の権利利益を害するおそれがあるものが該当する。 このため、個人を識別させる部分を除いた部分について、公にしても、個人の権利利益を害するおそれがないものに限り、部分開示の規定を適用することとしている。 |