志遠(高専だより)

令和6年3月 発行

SHIEN
第87号
ファーストペンギンになろう

校長 鶴見 智 

 学校のホームページにも載っているので皆さんもご存じのことと思いますが、去る1月17日に「NitKit未来創造工房」の開所式を行いました。この工房は、文部科学省「高等専門学校スタートアップ教育環境整備事業」の採択を受け整備したものです。地域課題解決やアントレプレナーシップ教育の実践の場としての役割を担っていますが、難しく考える必要はありません。皆さんのワクワク、ドキドキを試行錯誤して実装する「場」です。3Dプリンターやレーザー加工機をはじめとする先端的機器がそろっています。この工房での活動にはすべての学生が参加できますので、学年・コースを越え、一つの課題解決、新たな取組みにチャレンジしてほしいと思います。

 ところで、皆さんはファーストペンギンというのを聞いたことがありますか。群れで生活をするペンギンの中で、魚を捕るために最初に海に飛び込むペンギンのことをいいます。欧米ではリスクを恐れずチャレンジする人を、敬意を込めてそう呼ぶそうです。皆さんは誰しもがファーストペンギンになれる素質を持っていると思っています。そして「NitKit未来創造工房」が、ファーストペンギンになるために役立つならばこれほどうれしいことはありません。さあ、ファーストペンギンになろう。

ゴールは次へのスタート

教務主事 安信 強 

2019年12月に確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、その後、急速に世界的規模で流行し、私たちの生活に多くの影響を及ぼしました。
本校でも、令和2年度の、開校して初めての1ヶ月に及ぶ休校をはじめ、学校行事や大会の開催延期など、大きな影響を受けましたが、ようやく感染症拡大前の状況に戻りつつあります。
一方で、この間、AIやIoT、ロボティクス、DXやGX、SDGsなどの新たな技術の展開や概念の定義がなされ、私たちの日常生活に多くの影響を与えていることも事実で、感染症による制約が多い状況下で発展し、今後も成長が予想されています。
課題克服に向けてのアイデアや、これまでにない新たな発想と、その取り組みの積み重ねが、新しい技術への展開に繋がっていると言えます。

卒業は高専での学習や学生生活のゴールですが、その次のスタートでもあります。卒業生の皆さんは、新たな環境の中で目的意識を持ち、“自ら取り組む課題”を捉えて挑戦して欲しいと思います。また、在校生の皆さんは、令和6年度のスタートに向けて、“今後の課題”を捉えて取り組んで欲しいと思います。

卒業生からのメッセージ
高専生活を振り返って

5年機械創造システムコース 平野 遥也 

高専生活を振り返ってみると、たくさんの人と出会い、最高の思い出が詰まった5年間でした。まず寮生活では、面白くてユニークな親友たちと出会い、きついことや楽しいことを毎日共にしたくさん笑いあった日々はかけがえのない思い出です。

またソフトテニス部では、癖の強い先輩・後輩に出会い、同級生かのように話したり、世話をしたりされたりしました。目標としていた九州大会8連覇を達成することが出来たのは、たくさん面倒を見てくれた先輩や先生方、共に戦ってくれた後輩たちのおかげです。

親友や先生方、先輩、後輩たちに支えられながら様々な経験をし、一生忘れることの無い幸せな5年間を過ごすことが出来ました。本当にありがとうございました。

最後に一言!1度きりの高専生活、後悔のないように思いっきり楽しんでください!


卒業

5年知能ロボットシステムコース 水口 翔太朗 

長いようで短かった高専生活も終わろうとしています。今振り返ってみると、入学時から良い仲間に恵まれ、厳しいテストに揉まれながらも、有意義な毎日を過ごしてきました。特に5年生として過ごしたこの1年間はあっという間で、とても充実した時間となりました。

私はそんな輝かしい日々の中で、「挑戦」することの大切さを学びました。高専は時間に余裕があって、何事にも挑戦しやすい環境です。専門知識に詳しい先生、留学生、レベチで頭いいヤツ、バンドマン、オタク。色々な個性・価値観を持った人がいるこの学校でしか得られない経験も多いと思います。ぜひ、何かに挑戦して新しい自分を見つけてください。

最後に、これまで一緒に過ごしてくれた仲間や先生方のおかげで、人として、エンジニアとして成長することができました。ありがとうございました。北九州高専バンザイ!


五年間を振り返って

5年電気電子コース 家永 悠太郎 

今、自分は20歳なので、人生の1/4を高専で過ごしていたことになります。

それを聞くと長く感じるけど、入学してもう5年経ったというのが信じられません。高専生活が相当楽しかったのだと思います。

高専生活で忘れないであろう思い出は、友人と一緒に過ごした登下校の時間です。日田彦山線の時間に間に合うように志井公園駅まで走ったことや、モノレールから降りてエフコープ横の路地裏から高専に向かっていたことなど、5年間当たり前のように登下校して友達と会話をしていた毎日が自分にとっての一番の思い出です。

長期工場見学や体育祭など楽しい思い出もあるけれど、五年間の登下校の時間も大切な思い出だと卒業が近づいてから気づきました。

五年間はあっという間です。特にコース配属されてからは一瞬です。

皆さんも友人と過ごす何気ない時間も大切にして高専生活を楽しんでください!


色々な経験

5年情報システムコース 木村 望夢 

中学時代から情報系の勉強がしたいという気持ちがあったため、情報システムコースに所属し高専の大半を過ごしました。そして、その高専生活が終わろうとしており寂しさを感じています。

高専での5年間は、本当に貴重だったなと今なら胸を張って言えます。

他の高校では出来ないような経験を沢山しました。例えば授業の一環である工学系の実験。また、生徒主体の行事。専門的な授業。どれも高専でなければ経験できませんでした。もちろんそれらは、楽しいだけじゃありませんでした。大変だったり辛かったりもしました。しかし、クラスの友人と協力し、乗り越えることが出来ました。人と協力する、この経験も自分にとってすごく大事なものです。

こうやってたくさんの人にお世話になりながら高専で培った経験を、将来活かしていければいいなと強く思います。


高専での5年間

5年物質化学コース 風間 祥平 

本校の皆々様方、春の訪れを感じる中いかがお過ごしでしょうか。

高専という学校は5年制であり世間一般の高等教育とは一線を画しております。
私は入学して間もない頃、難解な数式と、レポートと、実験や実習の波を5年の長きに渡って耐え抜いていくという覚悟を求められ戦々恐々としておりました。
しかしながら、高専という学校は一貫した専門教育は言わずもがな、5年間という長期間の中で得難い経験を私に与えてくれたと思います。

高専祭や体育祭、オープンキャンパスでの中学生との交流、何より5年間どうでもいい話で議論し、詭弁をこねくり回してきた友人との生活はかけがえのないものでした。
後輩の皆様、私を参考にしろとは言いませんが、これからの高専生活が実りあるものとなることを心より応援しております。


5年生担任からのメッセージ
振り返り、先を見て!

機械創造システムコース 内田 武 

41名の5M学生諸君、無事(何とか)卒業できて、おめでとう!

頼りない担任でしたが、皆さんの協力で何とか過ごせ、私も卒業(定年退職)を迎えることになりました。どうもありがとう。

就職27名・進学14名で、就職戦線も以前とは変わりつつあり早い例では3月上旬に内々定が決まった学生がいたり、進学で少し苦労した学生もいましたね。学生会長(5M学生)を中心とした学生会行事では、コース代表・団長・評議員(体育・文化)のお世話のもと、体育祭では総合3位・応援団演舞2位、春季クラスマッチでは男子バスケ2位・ソフトボール2位、秋季クラスマッチではソフトボール2位・女子バレーボール2位と優勝こそ逃しましたが、全力で取組む姿は誇らしかったです。

これから各人が別々の人生を歩みますが、【目標】を持ち、事前の【段取り】を怠らず、【挑戦心】を持って取組んでください。皆さんの活躍と飛躍を心から期待しています。


雨洗風磨

知能ロボットシステムコース 松尾 貴之

雨洗風磨(うせんふうま)は、雨や風にさらされることによって心が清められ、磨かれるという意味の禅の言葉です。

困難や苦難に立ち向かい、前に進むことは、自分自身の大きな成長となると説いています。
社会にでれば、必ず雨風にさらされます。雨風に耐えられず倒れることもあるかもしれません。
それでも、進まないといけないという時、皆さんはどうするでしょうか。倒れたままでしょうか。時間がかかっても立ち上がって、雨風に立ち向かおうとするでしょうか。打ちのめされて倒れること自体は恥ずかしいことではありません。
しかし、常に自問自答すべきことは「打ちのめされた後、自分は何をしようとしているか」ということです。立ち上がるのに助けが必要であれば仲間を頼り、そして、いつでも高専に遊びに来てください。

ご卒業おめでとうございます。


変化を楽しめる人生を

電気電子コース 福澤 剛

卒業おめでとう。
令和3年4月から3年間、電気電子コースの担任として皆さんのそばにいて大変楽しかったです。

辛いこともあったと思いますが、今振り返れば、良い思い出ができた3年・5年間だったのではないでしょうか。そのような思い出ができたということは、人として成長できていると思います。
これから新しい進路に進みますが、世界・日本の変化は激しさを増しており、振り回され疲弊する場面が、大なり小なりいつか訪れると思います。

しかしながら、疲弊しても、自分が望む人生プラス家族をどう守るかをしっかり考えておけば、切り替え、立ち上がっていけると思います。
そして、正しい選択をするための情報を得るために、色々なことに目を向けて下さい。1つの出来事も違う方向から見れば、正反対の判断になることもあります。
与えられ、流されるままの人生にせず、家族と一緒に、自ら変化を楽しむつもりで生きて下さい。


変化を恐れずに

情報システムコース 秋本 髙明

卒業おめでとうございます。

進学する人はもう少し学校で勉強することになりますが、就職する人は会社で仕事をして給料を貰うという生活に大きく変わることになります。
学校を卒業して社会に出ることは、人生の中で結構大きな変化だと思います。
これ以外でも今後の人生の中で、様々な変化がみなさん自身や身の回りで起こることになると思います。
否応なく、みなさん自身がその変化に合わせざるを得ない場合も多々あるでしょう。しかし、ぜひ変化を恐れずにあるときは柔軟に適応してそれらを乗り越えて、前に進んでください。
みなさんの今後の活躍を期待します。


教科書を大事に

物質化学コース 後藤 宗治

皆さん、卒業おめでとうございます。
4月から新しい環境で生活することになります。特に就職する人は大きく環境が変わるとおもいます。しかしながら、就職したとしても勉強は今後も続きます。
どうしてかというと、就職関係で企業の人事の方と会う機会が多くあります。多くの企業は高専生に現場のリーダになって欲しいと期待しています。
現場のリーターになるにせよ、技術者、研究者になるにせよ、やはり日頃新しい技術に対応するためには勉強は必要になります。実際、私が所属する学会では、毎年、化学工学基礎講習会を開催していますが、多くの企業が受講します。(講習会の内容は基礎的な内容で本校で行っている授業内容とほぼ同様です。)受講動機は、「上司に進められた」「現在の仕事内容で必要を感じた」等です。卒業の際に教科書を教室に置いていく(捨てる)、後輩に譲る等することなく教科書は持って行ってください。恐らく、将来必要になります。

また、企業の行う就職試験も最終試験(面接)のみ、試験会場までの交通費や宿泊料を負担してくれる企業も多いです。これは、本校の教育を企業が評価している事と卒業生が就職先で頑張っている結果です。卒業する皆さんもこれに続くよう頑張ってください。


学生会からのメッセージ
1年の振り返り~2023

 学生会長 尾澤 要 

皆さん!こんにちは!今年度学生会長を努めさせて頂きました。機械創造システムコース5年の尾澤要です!

早いもので高専生活5年間が終わろうとし、連なって学生会としての5年間も終わりを迎えます。今年度の学生会行事を振り返ってみるとたくさんの思い出がありました。5月は約4年ぶりのかつて体育祭があり、10月は短縮ありの文化祭がありました。どの行事も局長、副局長をはじめ、学生会員、また学生の協力があっての事だと思います。本当にありがとうございました。

この5年間、生活や学生会でも挫けそうな時が沢山ありました。楽しいことは楽しかった記憶です。不思議なもので、挫折した時ほど鮮明に覚えています。挫折してもチャレンジしてください!必ず成長します!

最後に一言「最高の5年間でした!ありがとうございました!」

Spotlite
「実験」と「第一原理計算」の二刀流で道を拓く

物質化学コース 松嶋 茂憲 

物質・材料の電子構造は、あらゆる物性と構造が発現する土台であり、その明確化は最も重要な研究課題です。
量子力学の純粋理論に基づいて、物質・材料の電子構造を明らかにする理論計算方法が第一原理計算です。
1998年、第一原理計算の基礎である密度汎関数理論(density functional theory, DFT)の構築において先導的な役割を果たしたW. Kohn博士,量子化学分野において種々の計算化学的手法を確立したJ.A. Pople博士の二人にノーベル化学賞が授与されました。
筆者は、酸化物セラミックスの合成と物性評価,さらにデバイス化までの広範な特性試験(ガスセンサ,触媒,光触媒,無機顔料等)とDFT理論を基礎とする物質・材料の第一原理計算(バンド計算と分子軌道計算)に長年取り組んできました。
従来は、実験か第一原理計算のどちらか一方に専念することが、物質・材料系の研究者の常識とされてきました。
そのため、実験と第一原理計算の二刀流に着手した30年前は、学術会議において実験家と理論家の狭間で苦労することが数多くありました。
そんな状況下でも、招待講演を受ける機会に幾度か恵まれ、世界的に著名な研究者達とも交流を深めることができました。
それから四半世紀が過ぎて、状況が一変しました。計算理論と計算技術が目覚ましく進化し、スパコンを含むコンピュータの性能も格段に向上したことで、物質・材料分野の隅々まで第一原理計算が深く広く浸透してきました。
その結果、第一原理計算で検証されていない実験データは評価されなくなっています。
筆者がこだわってきた実験と第一原理計算の二刀流に魅せられた教え子たちも全国に広がり、東京大学や東北大学で教鞭を執る者,海外の大学院に雄飛する者,企業で要職に就く者も現れてきました。
還暦を過ぎましたが、教え子達には負けられないという気概で、今後も、新たな物質探索と材料開発の最先端を駆け抜けて行こうと考えています。


なぜ高専が小学校で出前授業をするのか

物質化学コース 大川原 徹 

高専勤続10年を超えました。最近は広報系の仕事をしばしばしています。

さて、2023年に北九州高専のホームページデザインをリニューアルするタイミングに合わせて、中学生向けに特化されていた出張実験講座・出前授業の一部を小学生向けにアレンジして募集しました。すると、嬉しいことに、わずか1年間で10件を超える依頼が入りました。動画共有サイト等で手軽に理系のコンテンツに触れることができる今の時代においても、子どもたちにとっては自分で考えて手を動かしてモノを作る、実験を通して自然法則を学ぶ、論理的思考力を養う、という機会がいかに重要であるかを再認識させられました。

また、私自身小学校や放課後児童クラブでの出前授業を通して、先生方の思いや子どもたちの声を聞くことで、気付いたことがあります。それは、今まさにサイエンスに興味を持ちかけている子どもたちが求めているのは常識を覆すような大発見や華々しい実験など「よくわからないけど何となくすごいって言って欲しそうなコンテンツ」に触れることではなく、ありふれた、しかしその子にとっては初めての実験を見守ってくれる「大人」の存在ではないだろうかということです。大人たちがサイエンスと呼んでいるものは、子どもたちにとってみれば遊びの延長です。私は、そのような遊びを斜め後ろから見守り、ネガティブワードを吐かずに、成功も失敗も後押ししてあげられる大人の一人として、草の根的な活動をしていければと考えています。

一度に相手にできる子どもの数は限られていますが、理系に興味を持ち、いつか世界を驚かせるような大発見をしてくれる人がその中から一人でも現れてくれれば。そう考えると、その日が来るまで、まだもう少しこの楽しい仕事を続けていきたいなと思えてきます。

退職教員メッセージ
エッ! 定年? 早っ‼

 機械創造システムコース 内田 武 

平成元年度に着任し35年、都合39年の教員生活も定年退職を迎えます。記憶によると、主要校務は担任7年(3M:3年・4M:3年・5M:1年)、教務主事補5年、学生主事補5年、寮務主事補4年、専攻科主事補3年、コース長4年、教務主事4年で、各種委員会・部会は多数です。現委員会・部会(45部門)に照合すると約85%を経験しましたが、「教務関連」に長年関わってきたような気がします。

教務主事の時は重要課題もあり「筆頭副校長」として様々な体験をさせて頂き、ほぼ定着した「コース制」もこの時期の検討で、高専機構や文科省への折衝・北九州市中学校長会への説明など、かなりの労力と時間を要しました。同じ頃、「学生のキャリア支援」の必要性を痛感し、新規に部会を立上げ4年間奔走しました。 JABEE委員会には10年程関わり、「JABEEって何?」から始まり外部研修会にも参加し、2度の本校実地審査に対応しました。

高専での35年を大過なく過ごせましたのも、皆様のご理解・ご支援の賜物と心よりお礼申し上げます。教育改革渦中にある高専での皆様のご活躍を祈念しつつ、今後は「再雇用」でお邪魔しますが、これまで同様よろしくお願い致します。


今、思うこと

電気電子コース 加島 篤 

昭和50年12月、受験を決めた北九州高専の校門まで、国鉄日田彦山線の志井駅から父と一緒に歩きました。電気工学科入学後は、中2から始めたラジオやオーディオアンプの製作を続けながら日々の授業と実験をこなし、同級生たちと高専祭のクラス展示の準備や平尾台の鍾乳洞探検などに熱中しました。卒業後は愛知県の豊橋技科大に編入学し、大学院では電子材料の研究室に入りました。そして、北九州モノレールが開業した昭和60年の春に北九州高専電気工学科の助手に採用され、以来39年間本校の教員を務めてきました。

学生時代に憧れたエンジニアにはなれませんでしたが、地元に戻って電気関係の仕事につき、家庭を持って3人の娘たちを育て、年をとり弱っていく両親を間近で見守ることができました。

5年間同じクラスだった高専の同級生とは、今でも頻繁に連絡を取り合っています。昨年末には、恒例のクラス会(43回目)を小倉と品川の2会場で同時開催しました。高専に入学して良かった、電気が好きで良かったと心から思っています。