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令和6年8月 発行
校 長 鶴見 智
本校は「明るい未来を創造する開拓型エンジニアの育成」を教育理念としている。皆さんは今、エンジニアとなるためのテクノロジーの基礎を学んでいる。今回はそのテクノロジーとエンジニアに関して。
まず、テクノロジーは本当に未来を明るくするのだろうか。確かにAIや通信技術、半導体技術等は私たちの生活をますます便利にしている。それらの技術により少ない時間で効率よく情報を得、高速に移動できる。店先では(新札が発行されたばかりだが)キャッシュレスが当たり前だし、スマートフォンなしの生活は考えられなくなっている。しかし便利さの裏にはエネルギー需要の増大が隠れている。ジェイソン・ヒッケルは著書「資本主事の次に来る世界」の中で「テクノロジーはわたしたちを救うか?」と問いかけている。例えば温暖化問題はGX(グリーントランスフォーメーション)技術で解決できると多くの人が信じている。確かに過去20年間でクリーンエネルギーの生産は大幅に向上したがエネルギー需要も増えていて、クリーンエネルギーの生産量を2倍、3倍にしても世界のCO2は減らない、とヒッケルは指摘している。 我々はテクノロジーの発展は未来を明るくすると信じている。しかし、目の前の課題だけにとらわれていると、あるいは性能をあげることだけにとらわれていると何かを見失う。テクノロジーは開発現場のみで完結するものではない。人や環境、生物との関係を意識して開発すべきものである。
次にエンジニアの資質とはなんだろうか。NHKの「プロジェクトX」という番組の中で、ある出演者が「最後までやり抜くことがエンジニアの大事な資質だ」といっていた。うまくいかなくても簡単には諦めない、もう駄目だと思って力を抜いたとたんに解決の糸口が見つかることがある。それが新しい技術や価値を生み出すこともある。ところで話は変わるが、先日古いiPhoneを最新のものに買い替えた。実はiPhoneは初代から使い続けている。私は他にもiPad、MacBook、iMacとAppleの製品を愛用している。そのAppleの創業者のひとり、スティーブ・ジョブズはスタートアップの先駆者的な存在であるが、大学に入るものの興味のない必修科目をとるのが嫌で中退した。しかしその後も電子装置の修理のバイトをしながらもぐりで哲学やカリグラフィーの授業にでていたという。また、禅にも興味をもち生涯シンプルな美にこだわった。彼の美意識はそうした経験の中で培われてきたもので、それがAppleの製品の機能美に現れている。数学の偉大な定理や物理の法則・理論には「美」がある。フィボナッチ数列や黄金比さらに素数分布の世界を深く知るにつれて思わず人知を超えたものを感じることがある。優れた工業製品、機能的な道具には無駄がない。エンジニアにも美を感じるセンスが必要だ。今はやりのAIは美について説明はするだろうがはたして美を感じるセンスを持てるだろうか。
電気電子コース 加島 篤
私が育った家には、居間のある母屋と子供部屋をつなぐL字形の暗い廊下があり、夜になると蛍光灯のスイッチの場所が分からず、家族みんなが不便を感じていました。高専3年生のある日、専門書を参考にネオンランプと数点の部品を組み合わせて、消灯時でもスイッチの位置が分かるようにしました。暗闇の中で蛍のように点滅するオレンジ色の小さな光に母は喜び、「おまえを高専にやってよかった」と言ってくれました。母は5年前に亡くなりましたが、その時の笑顔を今も鮮明に覚えています。
企業のエンジニアや学生たちが家電やおもちゃを魔改造し、奇抜な競技で順位を競うテレビ番組が人気です。正に切磋琢磨。競争は人間を熱狂させ、技術の急速な進歩を促します。しかし、日々の暮らしを支える技術の全てが競争の中から生まれたわけではありません。日本各地を訪ね歩いた民俗学者の宮本常一は、「生活を向上させる梃子(てこ)になった技術」に深い関心を寄せました。この言葉は、技術の本来あるべき姿を示唆していると思います。
現在、カーボンニュートラルやSDGsが声高に叫ばれる中で、進化するAIは真実とフェイクの違いを一層曖昧にし、爆薬を抱えたドローンが戦場を飛び交っています。「技術は何のため、誰のためにあるのか」が改めて問われています。世の中はロボットとスマホとアプリだけでできてはいませんし、動いてもいません。学生時代に学ぶ多様な知識と技術が、競い合いではなく、多くの人を笑顔にするために役立つことを願っています。
寮務主事 小清水 孝夫
タイトルを見て、疑問に思われた方もいるかもしれません。実は、私は本校の卒業生です。でも寮生ではありませんでした。寮生でもないのに、「浩志寮での思い出」と書いてしまいましたが、当時は、通学生が2週間入寮する短期寮という制度があり、少しだけ寮生活を体験しました。今考えると、たった2週間ですが、同じ学校に通う先輩や友人と同じ屋根の下で生活を送れたことは、交友関係を深めることができる非常に貴重な機会であったと思います。その後、今に至るまで、寮生活の機会は訪れることがなく、この浩志寮での寮生活が、私にとって人生唯一の寮生活となりました。本当にいい思い出です。
集団生活を通して学び取れることは非常に多くあります。必ずそれは将来の糧になってくれることでしょう。多くの時間を浩志寮で過ごす寮生の皆さんには、他の学生と協働しながら、この浩志寮で、充実した寮生活を送ってほしいと思います。
情報システムコース 大森 優雅
4月より情報システムコースに着任しました、大森と申します! 私の専門は情報工学で、特に学習支援×AIに興味を持っております。志遠に原稿を投稿するのは76号以来となります。何を隠そう、私はこの北九州高専出身の元高専生なのです。
私はパソコンやゲームに昔から興味があったため、情報分野を学ぶために旧・電子制御工学科(情報システムコースの前身)に入学しました。入学後は勉強だけでなく、コンピュータ研究部での活動、高専祭や体育祭への積極的参加など、高専生ならではの青春を歩んできました。この変え難い青春を謳歌することのできる皆さんの勉学や活動を支援したいと思い、私はここへ帰ってきました。
今日、“AI”をはじめとする情報技術は飛躍的な進化を遂げています。そんな進化の著しい情報分野を含む、専門の知識や技術について深く知るためには、基礎となる技術を勉強し、実験などでたくさん触れることが重要です。この高専で、あなたの興味ある専門分野について共に学んでいきましょう!
一般科目 奥 真裕
専門は言語学で、英語だけではなく、様々な言語に関心を持っています。特に、中央アジアのトルクメニスタンという国で話されているトルクメン語という言語の研究を行っており、これはトルコ語などとともに、中央ユーラシアの広い地域で話されているチュルク諸語と呼ばれる言語のひとつです。日本人にとってはなじみのない言語かもしれませんが、これらの言語は日本語と同じく「てにをは」にあたる形式を用い、基本語順も似ています。トルクメン語を自由に話すことができるのは日本人では私だけと言われており、これは密かな自慢です。
私の好きな言葉に「1つの言葉は1人の人間(Bir dil bir insan.)」というトルコの格言があります。これは、1つの言語を話すことができれば1人分の人生を歩むことができるという意味です。言葉の習得を通じて、その言語が話されている国や地域の社会や文化についてもよく知ることができるということを表しているのでしょう。皆さんも、言語を習得して、2人、3人分の人生を歩んでみませんか。
※写真はトルクメン人の伝統的な民族衣装をまとった私です。
一般科目 横山 慎悟
今年度の4月に着任しました横山慎悟です。これまで私は紀元前中国、特に春秋戦国時代の文化や思想を対象に研究活動を行ってきました。
春秋戦国時代は、戦乱や技術革新によって社会の形が大きく変わり、それまでに存在した常識や権威が次々と崩れ去った時代でした。この混迷の中から既存の権威を再構築する者・新たな常識を打ち立てる者等、様々な立場の思想家達が生まれました。漢文の時間に読む古代の文章は、そんな彼らの「新たな正しさ」を求める試行錯誤の跡だと言えます。
社会の形が目まぐるしく変化し、人々の生き方も多様化するこの令和の時代、もしかすると我々も春秋戦国時代の人々と似た状況に置かれているのかもしれません。それならば、一見無用だと思われる漢文の勉強にも、皆さんの未来を切り拓くヒントが隠されていることでしょう。もちろん、他の時代・地域の文学作品からも、多くの足跡を窺い知ることができます。是非色々な本に興味を向けてみてくださいね。
1年3組 植木 菜々美
高専入学時、私は不安でいっぱいでした。
勉強のこと、人間関係のこと、部活や通学など分からないことばかりで、学校に行くことが少し怖かったです。
しかし、三か月ほどたった今では、そんな不安はほとんどなく毎日楽しく学校に通っています。難しいと思っていた勉強は、先生がわかりやすく授業をしてくださり、難しい問題は友達が優しく教えてくれます。
はじめは少し怖いと思っていたクラスメイトは話してみると、面白い人ばかりですぐに友達になることができました。
自由な校風に個性豊かなクラスメイトたち、これから始まる専門科目の授業や体育祭や高専祭をはじめとした色々な学校行事など、高専だからこそ体験できることがたくさんあることに気づき、私はとても興奮しています。
本当に高専に来て良かったと思いました。高専への進学を薦め、応援してくれた中学の先生や家族に感謝しています。これからの高専生活、思う存分楽しみたいです。
1年4組 浅野 桧児
高専に入学して約三か月の間で、私が「高専に入学してよかった」と感じた要素が二つあります。
一つ目は授業です。どの科目の授業も内容が濃く、毎時間ごとに新しい発見をすることができます。入学してすぐこそは90分授業の大変さを感じていましたが、それも今では全く苦になりません。また、授業が終わったあと、何かわからないことがあれば、先生方が教えてくださります。学習しやすい環境や雰囲気が整っているところが、高専の大きな魅力だと考えています。
二つ目は友人の存在です。入学前、私が唯一不安に感じていたことは人間関係です。友達作りはうまくいくだろうか、自己紹介では何を話そうか、と、就寝前に考え込んだりもしました。しかし、そのような不安は杞憂で、この三か月で多くの友人に恵まれました。私にとって友人とは、支え合い、競い合える、最高の存在です。
高専に入学して、まだたったの三か月です。これからも、新しい発見を目指して、日々全力で過ごしていきたいと思います。
男子寮長 電気電子コース5年 江藤 大輝
私は地元が遠方であったために高専入学時、先輩や同級生に、友人はもちろん、顔見知りもいませんでした。全く新しい環境への期待と共に不安は大きかったですが、入寮後、親切で個性的な友人や先輩達に囲まれ、そんな不安が吹き飛ばされるくらいに寮生活は刺激的で楽しいものでした。
主に寮生会役員や寮務の先生方に支えられながら、通常よりも1年早く3年生後期から2年間、男子寮長を務めさせていただきました。
上級生と下級生に挟まれた1年目では、歴史ある男子寮のルールを幾つか変更するために、役員会や私個人で考えなければならないことが多かったです。2年目には、役員と先生方と、前年度の経験を活かしてさらに寮生活の改善に努めました。
寮生たちとの信頼関係が深まり、互いに助け合う環境が整ったことを実感しています。私自身も、リーダーシップや問題解決能力が向上し、貴重な経験を積むことができました。寮長としての役割を終え、これらの経験は一生の財産になると感じています。
体育局長 知能ロボットシステムコース4年 神野 太陽
皆さんこんちには!今年度体育局長を務めさせていただいております、知能ロボットシステムコース4年の神野太陽です!
初めに、今年度体育祭にご来場していただいた皆さま、心より感謝申し上げます。体育祭を運営してみて、北九州高専の先生方や学生会のNAKAMAたち、先輩、後輩など多くの方々に支えて頂き、また近隣の住民の方々やお店のご協力があって、例年体育祭ができているということをひしひしと感じました。
その中でも、やはり学生会員の働きは体育祭を成功させるための要となったことは間違いありません。学生会員は体育祭で備品の管理や競技の運営、会場設営など、この他にも数え切れない程の仕事を務めました。皆が楽しんでキビキビと、真剣に働いてくれていた姿は、私にとって体育祭の成功と同じくらい価値があるものだと感じさせてくれました。
私の、この先の人生においてもほんの少ししかないであろう貴重な体験をさせていただいたことを、とてつもなく感謝いたします。