北九州高専について

志遠 第94号

令和8年8月 発行

SHIEN
第94号
答えを出さないことの大切さ

校 長 片山 佳樹 

今、皆さんを含め、多くの人が生成AIを使っています。分からないことがあるとAIに聞けばたちどころにそれなりのことを教えてくれます。このような世界に生きていると人は何事にもすぐに答えが見つかるということに慣れてしまいます。しかし、それは本当に答えでしょうか?実は私たちが生きていく上で大切なことには答えがありません。これからの世界では、人はヒトにしかできない部分を受け持たねばなりません。物事を決定したり、選んだり、実行する方法を決めたり、何もないところから何かを作り出したりしなければなりません。これらのことは全て、たちどころに答えが見つかったりはしません。私たちはそれについて考え続けなければなりません。ある物事を答えが出ないまま、自分の中に保持していく力をNegative Capabilityと言います。皆さんがこれからの世の中で最も必要とされる力がこのNegative Capabilityです。そのためには、自分の中で対話ができなければなりません。すなわち、自分の中に多くの他の人の考え方を蓄える必要があります。もし自分の中に自分しかいなければ、どうやって対話できるでしょう?そういう人は、SNSやネットに聞くしかなくなるのです。それは本当の意味での考察にはなりません。ぜひ、多くの先人が悩んで考え続けたプロセスを本から読み取って自分の中に多くの人を存在させてください。それが皆さんの人生を豊かにする唯一の道かもしれません。

雄志台
手を抜けば手がかかる

物質化学コース長 井上 祐一 

お寺を参拝した際、小さな看板にこの言葉が掲げられていました。おそらく皆さんも思い当たる経験があるのではないでしょうか。これは単なる作業上の注意ではなく、人財育成や自己成長にも通じる言葉だと思います。
例えばバイオ分野の実験では、PCRや細胞培養など繊細さが求められる作業が数多くあります。最初の数秒を雑に扱っただけで、結果として1週間のやり直しにつながることもあります。ピペット操作を丁寧に行うこと、雑菌汚染を防ぐための対策を徹底すること、実験ノートを正確に記録すること、こうした地道な行動の積み重ねが、技術者として不可欠な再現性、信頼性、そして責任感を育てます。これらは教科書だけでは身に付かず、現場での経験を通して初めて獲得できる力です。
さらに、実験やレポート作成は「正しく手をかける習慣」を身に付ける最良の訓練でもあります。丁寧な作業は失敗を減らすだけでなく、論理的思考力や課題発見・解決力など、技術者としての基礎体力を確実に鍛えてくれます。
つまり、「手を抜けば手がかかる」とは、未来の自分を育てるための合言葉です。一見すると面倒に思える作業を丁寧に行うことは、今の自分のためだけでなく、数年後に現場で活躍するあなた自身への投資になります。高専での実験や研究は、その投資を始める最初のステージです。学生の皆さんは手を抜くことなく、着実に取り組んでいきましょう。

寮務主事所感
広がる世界、広がる選択肢

寮務主事 小清水 孝夫

本校学生寮には海外からの留学生が生活しており、寮内で交わされる言葉や文化の違いに触れる機会は、学生が海外に目を向ける一つのきっかけになっていると思われます。また、学校としても国際交流の取り組みを進めており、その一つが韓国をはじめとする協定校への海外研修です。
その研修をきっかけに留学を決意する学生が現れてくれることは、海外研修担当者として本当に嬉しいことです。来年度、協定校へ留学するため準備を進めている学生がいます。研修後間もない頃、その学生が相談に来てくれました。留学を決めるまでには、期待だけでなく不安もあったはずです。それでも自分の思いを言葉にし、一歩を踏み出そうとする姿勢に、強い決意を感じました。その勇気を心から尊敬しています。
新しい環境に身を置くことは、自分の世界を広げる大切な機会です。海外へ踏み出す学生には、その決意を胸に前へ進んでほしいと思います。そこでの経験が、きっと皆さんの未来を支えてくれるはずです。
(写真は、協定校である全北大学校のキャンパスです。水盤の底に立体的に造形された世界地図が国際性を象徴していました。)

新入教員メッセージ
技術がもたらす社会の変化

情報システムコース 諸藤 秀幸 

情報システムコースに着任した諸藤です。30年近く公務員として勤務し、社会人大学院で学位を取得できたことをきっかけに転職しました。
私の両親は北九州の出身です。私が小学生までの夏休みは毎年、家族で祖父母のいた門司に行っていました。先日、門司に出かけてみました。祖父母の家が近くにあった門司区役所から見える関門海峡と関門橋の景色は、私の幼少期の記憶と変わっていませんでした。ただ、今はない路面電車をここで見た記憶が蘇りました。調べると、かつて西鉄北九州線が走っていて、ほどなく廃止されたそうです。私にも路面電車自体に乗った記憶はなく、祖父や伯母の運転する車で移動していました。車社会の到来がもたらす社会の変化の只中にいたことを実感しました。
上の似顔絵は、生成AIにプロンプトを打ち込みながら作成しました。この技術は、社会を、そして教育のあり方を変えるでしょう。ここ北九州で再度、技術がもたらす社会の変化を経験することに、不思議な縁を感じています。


焦らず、諦めず、一歩ずつ

情報システムコース アズラン アズヒム 

新しいことを始めるとき、私たちはつい早く結果を求めてしまいます。私自身も、思うような成果が出ないと焦り、自信を失いそうになったことが何度もあります。しかし、振り返ってみると、そのようなときこそ、目の前の課題に一つずつ取り組み、歩みを止めないことが大切でした。たとえ小さな一歩であっても、積み重ねれば、やがて大きな成長につながります。
この春、本校に着任し、私も新しい環境での一歩を踏み出しました。まだ分からないことも多く、失敗することもあると思います。それでも、失敗を恐れず、そこから学びながら前に進んでいきたいです。学生の皆さんにも、周りと比べて焦るのではなく、自分の歩幅を大切にしてほしいと思います。うまくいかないときも諦めず、昨日の自分より少しでも成長できたことを喜びながら、ともに一歩ずつ歩んでいきましょう。

新入生メッセージ
高専生になって

1年2組 副田 一徳

僕はロボットエンジニアになるために北九州高専に入学しました。北九州高専に入学する前まで、ロボットの設計やプログラムさえできれば、ロボットエンジニアになることができると考えていました。しかし、入学してから、コミュニケーション能力や自主性など、社会人になるためには、知識以外にも必要な能力があるとわかりました。そして、北九州高専は、専門的な学習と一緒に、その社会人に必要な能力を身につけられる場所であると考えています。体育祭では、学校全体で練習することはほとんどなく、個人個人で練習をしなければいけなくて、自分たちで、クラスで練習できるようスケジュールを組まなければなりません。このように、「他人にやらされる」のではなく、「自分から進んでやる」ことを求められます。
僕は、北九州高専に入学して、気づけたことや新たな学びがたくさんありました。これからの高専生活で不安なこともありますが、それ以上に期待していることが多くあります。まだまだ高専生活は始まったばかりですが、これからの5年間を自分にとって有意義な時間にしていけるように頑張ります。


高専生活で経験したこと

1年3組 川﨑 千夢 

私は高専入学前、勉強面と生活面の両方に不安がありました。高専は勉強のレベルが高いと聞いていたため、授業についていけるのか心配でした。また、高専入学と同時に寮へ入寮し、親元を離れて初めての集団生活を送ることにも不安を感じていました。しかし、入学してみると、その不安は少しずつなくなりました。先生方の分かりやすい授業や丁寧なご指導のおかげで、勉強にも自信がつきました。寮では先輩方と交流する機会が多く、勉強や学校生活について気軽に相談できます。また、仲間と協力しながら生活する中で、協調性や思いやりの大切さを学びました。学校行事の中で、私が特に印象に残っているのは体育祭です。一年生から五年生までが一丸となって競技や応援に取り組み、学年を超えた交流を深めることができました。これからも高専生、そして寮生として、仲間とのつながりを大切にしながら充実した学校生活を送っていきたいと思います。

寮長メッセージ
寮長を務めて

 男子寮長 知能ロボットシステムコース5年 竹村 一耀

この一年間、寮長として寮の活動に携わってきました。

振り返ってみると、高専祭のバザーやクリスマス会の準備、毎月の総務会や食堂会議、寮マッチの運営など、さまざまな活動に関わってきました。また、下級生の生活について直接話をする機会もありました。

寮長になる前は、寮長とは寮生をまとめ、一人先頭に立って活動する役割だと思っていました。しかし、実際に一年間務めてみると、自分一人の力だけではどうにもならない場面がたくさんありました。特に、自分自身に余裕がない時期には、行事の準備など他の寮役員や先生方に助けてもらうことも多くありました。

その経験を通して学んだのが、「人に頼ること」と「人に働きかけること」です。自分だけで抱え込むのではなく、周囲に相談して助けを求めること。そして、必要なことを伝え、協力してもらうこと。そうして周りの人と力を合わせることで、一人では無理だと思ったことも進めていくことができました。

寮長という立場にいながら、周囲の人に支えてもらうことのほうが多かった一年だったかもしれません。しかし、だからこそ、寮は一人の力で運営するものではなく、多くの人の協力によって成り立っているのだと実感することができました。

この一年間、寮長として活動する中で関わってくださった先生方、寮役員のみなさん、そして寮生のみなさんに感謝しています。この経験をこれからの生活でも活かし、困ったときには一人で抱え込まず、周りの人と協力しながら物事に取り組んでいきたいと思います。

Spotlight
学びを深めよう

機械創造システムコース 種  健 

皆さんは、勉強するときはひたむきに学び、遊ぶときは思い切り遊ぶ(いわゆる、よく学び、よく遊べ)を実践していることでしょう。ここでは、「1ランク上の学び」について記したいと思います。私が本校に着任して17年、学生の研究活動に関わってきましたが、予想を上回る速さで成果を出す者が現れ、驚くことがあります。振り返って思うのはただ一つ、「実に楽しそうに研究していたな」ということです。知識を得て、理解が深まると、学生は自ら「次はこうしたい」と研究の計画を相談してくれるようになります。同じ方向を向き、主体的に研究を進める姿は、本当に頼もしいです。学生主体の学びの場は限られますが、社会人になると逆に、答えの見えない課題に自ら対応する場面が増えます。いま、「自律的に取り組む経験」を積んでおくことは、将来どんなことにも前向きに乗り越える力になることでしょう。皆さんが研究の楽しさに気づくきっかけになることを願い、私もサポートしていきたいと思います。


エネルギー 注ぐ価値ある 舞台なれ

知能ロボットシステムコース 富永 歩 

知能ロボットシステムコースの富永です。令和3年10月に着任し、早くも5年がたとうとしています。専門はロボティクスで、これまで林業用ロボットの開発や、ベイズ推定に基づく移動ロボットの自己位置推定に関する研究に取り組んできました。最近では共同研究も始まり、メカトロニクスを中心に、培ってきた技術を生かして「誰かの、何かの役に立つこと」に力を注いでいます。タイトルは、先日の本校川柳会に寄せた一句です。担任、研究、授業と慌ただしい日々が続き、心身ともに疲れることもあります。それでも、これらはエネルギーをかける価値があり、自分や学生、学校のためになると信じています。みなさんは何に価値を感じ、エネルギーを注いでいますか。知識を蓄えること、技術や身体能力を磨くこと、目標を達成することなど、価値を感じるものは人それぞれです。本校が皆さんにとってエネルギーを注ぎたいものがあり、輝くことができる舞台であり続けるよう、私も全力を尽くします。

TOPICS
体育祭を通して

 体育局長 物質化学コース4年 宮本 凱成

こんにちは。今年度体育局長を務めさせていただいております、宮本凱成です。

改めて、体育祭ありがとうございました。無事に体育祭を終えられたのは、開催にご理解・ご協力いただいた保護者の皆様や近隣の皆様、支えていただいた先生方、学生会員、そして体育祭を楽しんでくれた学生の皆さんのおかげです。

元々感謝と謝罪は素直に口に出して伝える性分なのですが、体育祭の準備・運営にあたって重ねた「ありがとう」と「ごめんなさい」は数え切れません。そんなことを考えていると、自分の未熟さを恥じるとともに、助けてくれる人たちの存在に胸が熱くなります。もうどの方向にも足を向けて寝られません。

そして、学生の皆さんが全力で頑張る姿を見られたことを、とても嬉しく思います。全力で頑張ってる人ってすごくかっこいいので。
そんな全力が空まで伝わったので、当日は快晴だったんだと思います。いわば…「∞はればれーる!!!!!」ですね。

改めて、体育祭開催にご協力いただいた皆様に特大の感謝と愛を送ります。本当にありがとうございました。