文化交流史を受講する4・5年生を対象に、奈良からお招きした墨職人の長野睦さんによる特別授業「すみからすみまで墨のおはなし」を実施しました。
授業前、学生の中には「墨はイカスミからできていると思っていた」「書道で固形墨を磨ったことがない」という者もおり、墨づくりそのものをイメージできない学生も少なからずいました。
授業では、墨の原料や製造工程、職人としてのこだわりについて、実演も交えてお話しいただきました。煤・膠・香料のみを材料とする工程そのものは、想像よりもシンプルに感じた学生もいましたが、乾燥も含めて完成までに長い時間を要することや熟練した技術が求められることを知り、伝統工芸の奥深さに驚く様子が見られました。
学生からは、
・私が学んでいるITシステム開発も、何度もエラーを修正しながら根気強く取り組む必要があります。作る
ものは違っても、良いものを生み出すための『諦めない気持ち』や『こだわり』は同じだと感じました。
・工程は少ないように見えたが、乾燥に2年かかると聞いて一気にスケールの大きさを感じた。
・長野さんの技術は長年の積み重ねの結晶であり、伝統を守り続ける姿勢がかっこいいと思った。
といった感想が寄せられました。
長野さんの授業を受けた翌週には、担当教員による発展学習として、墨の材料である膠(動物の皮や骨などから作られる接着剤)への理解を深めるために実際に膠を使う体験をしました。膠とチョークの粉を混ぜて絵の具をつくってみたところ、時間が経つにつれて動物由来のにおいが現れました。学生からは「墨に香料を入れる理由を実感できた」という声も聞かれました。
膠は伝統的な墨や絵具の材料として知られますが、工業用ゼラチンとして現代でも幅広く利用されています。学生たちも、伝統工芸の材料が現代のものづくりや産業とも関わっていることを実感したようでした。